「今度監査あんねんけど、何を準備したらのかわからない」とお問合せいただくことがあります。
「監査」ではなく「巡回指導」の案内の場合もあります、今回は監査と巡回指導の違いにも触れ、巡回指導で確認される38項目について説明します。
目次
1.巡回指導とは?
「巡回指導」は、国土交通省が平成2年12月から地方貨物自動車運送適正化事業実施機関として指定されたトラック協会の適正化指導員が実施するようになりました。
基本的には、各運送事業者の営業所に行って、法令に基づいて事業を実施できているかどうかのチェックを行います。
そしてルール通りにできていない箇所については運送事業者に“指導”します。
巡回指導の前には日程や必要書類などについて事業所へ通知が届き、当日準備すべき書類の指示があります。
確認される内容については「3.巡回指導の38項目とは?」で詳しく説明いたします。
2.監査とは?
「監査」は、運輸支局の監査担当が実施するものです。
重大な事故を起こしたとき、法令違反が疑われる通報があったときに行われる「特別監査」。こちらは法令違反等の重大さを重く見られ全体的に確認されます。
もう一つの「一般監査」は、特別監査以外の端緒に応じた重点項目を定めて法令順守項目を確認する監査となります。
また、営業所に直接来られる監査は、巡回指導と違い事前の連絡がない場合もあります。
巡回指導は、後述のように(「4. 事業所のランクについて(ランク表)」のように結果が通知され、E判定だと適正化実施機関が運輸支局に通報し、監査となってしまう場合もあります。
3.巡回指導の38項目とは?
巡回指導で確認される項目は38項目あります。
では、どのような項目について確認されるのか、項目と書類についてみていきましょう。
事業計画等 (項目1~項目8)
- 項目1 【重点項目】 主たる事務所および営業所の名称や位置の変更はないか
- 項目2 【重点項目】 自動車車庫の位置および収容能力の変更はないか
- 項目3 【重点項目】 自家用貨物自動車(白ナンバー)による違法な営業類似行為はないか
- 項目4 【重点項目】 名義貸し、事業の貸渡しなどはないか
- 項目5 営業所に配置する事業用自動車の種別および数の変更はないか
- 項目6 ドライバーの休憩・睡眠施設の位置、収容能力は適正か
- 項目7 ドライバーの休憩・睡眠施設の保守や管理は適正か
- 項目8 各種届出事項に変更はないか
【巡回指導時に確認する帳票】
- 登記簿謄本等
- 経営許可申請書
- 役員変更届出書
- 事業計画変更事前届出書
- 事業計画変更事後届出書
- 事業計画変更認可申請書
- 総勘定元帳
- 固定資産台帳
- 経費明細書
- リース契約書
- 保険関係加入台帳
- 現金出納帳
帳票類の整備・報告等 (項目9~項目13)
- 項目9 事故記録を適正に記録し保存しているか
- 項目10 自動車事故記録を適正に記録し保存しているか
- 項目11 運転者台帳および労働者台帳を適正に記入等し、保存しているか
- 項目12 車両台帳が整備され、適正に記入等しているか
- 項目13 事業報告書および事業実績報告書を提出しているか
【巡回指導時に確認する帳票】
- 事故記録簿
- 自動車事故報告書(控)
- 運転者台帳(労働者名簿)確認はされないが労働基準法に基づき事業場ごとに作成する必要あり
- 車両台帳(自動車検査証)
- 事業報告書・事業実績報告書(控)
運行管理等 (項目14~項目26)
- 項目14 【最重点項目】 運行管理者を選任し、適正に届出をしているか
- 項目15 【最重点項目】 過労防止を配慮した勤務時間・乗務時間を定めて、それを基に乗務割を作成し、休憩時間や睡眠のための時間が適正に管理されているか
- 項目16 【最重点項目】 過積載運送を行っていないか
- 項目17 【最重点項目】 点呼の実施およびその記録や保存は適正か
乗務前・乗務後、それぞれ原則として対面であるか
アルコールのチェックを行っているか
- 項目18 【最重点項目】 ドライバーに対する輸送の安全確保に必要な指導監督を行っているか
- 項目19 【重点項目】 運転日報(乗務等の記録)の作成や保存は適正か
- 項目20 【重点項目】 運行記録計(タコ)による記録およびその保存は適正か
- 項目21 【重点項目】 運転指示書の作成、指示、携行、保存は適正か
- 項目22 【重点項目】 特定のドライバーに対して特別な指導を行っているか
- 項目23 【重点項目】 特定のドライバーに対して適性診断を受けさせているか
- 項目24 運行管理規定を定めているか
- 項目25 運行管理者に所定の講習を受けさせているか
- 項目26 事業計画に従って必要な人数のドライバーを確保しているか
【巡回指導時に確認する帳票】
- 運行管理規程
- 運行管理者選任・解任届(控)
- 運行管理者資格者証
- 運行管理者研修手帳
- 運転日報・乗務記録
- 運行指示書
- 乗務基準(特別積み合わせ事業の場合)
- 運行計画および勤務割当表
- 運行記録計による記録(タコグラフ)
- 乗務実績一覧表(拘束時間管理表)
- 点呼記録簿
- ドライバーへの指導教育計画表・記録簿
- 適性診断受診結果表
- 運転記録証明書
- 無事故無違反証明書
車両管理等 (項目27~項目31)
- 項目27 【最重点項目】 整備管理者が選任され、届出をしているか
- 項目28 【最重点項目】 定期点検基準を作成し、これに基づいて点検・整備を行って定期点検記録簿等が保存されているか
- 項目29 整備管理規程を定めているか
- 項目30 整備管理者に所定の研修を受けさせているか
- 項目31 日常点検基準を作成し、これに基づいて点検を行っているか
【巡回指導時に確認する帳票】
- 整備(車両)管理規程
- 整備管理者選任・解任届(控)
- 整備管理者資格者証
- 整備管理者研修手帳
- 日常点検基準
- 日常点検表
- 定期点検基準
- 定期点検整備実施計画表
- 定期点検整備記録簿(3・12か月)
労働基準法等 (項目32~項目35)
- 項目32 【最重点項目】 法定の定期健康診断を実施し、その記録や保存が適正か
深夜労働は年2回の健診がされているか確認
- 項目33 【重点項目】 就業規則が制定され、届出されているか
- 項目34 36協定が締結され、毎年届出されているか
- 項目35 運転時間を除いた労働時間や休日労働に違法性がないか
改善基準や36協定に違反した労働はないか確認
【巡回指導時に確認する帳票】
- 就業規則
- 労基法36協定
- 出勤簿
- 健康診断結果表
法定福利関係 (項目36~項目37)
- 項目36 【最重点項目】 労災保険や雇用保険に加入しているか
- 項目37 【最重点項目】 健康保険や厚生年金保険に加入しているか
【巡回指導時に確認する帳票】
- 労災・雇用保険加入台帳
- 健康保険・厚生年金加入台帳
- 賃金(給与)台帳
特に徹底して見られる帳票 | |
点呼記録簿
乗務記録 タコグラフ 運行指示書 乗務割 |
指導教育記録簿類
定期点検整備記録簿 定期健康診断結果票 社保加入台帳類 事業計画の変更 |
運輸安全マネジメントの実施は適正か
- 輸送の安全に関する計画を作成しているか?
- 運輸安全マネジメントの取り組みを公表しているか?
4.事業所のランクについて(ランク表)
点数 | ランク |
90点以上 | Aランク(適正に行われている項目が90%以上) |
80~90点未満 | Bランク |
70~80点未満 | Cランク |
60~70点未満 | Dランク |
60点未満 | Eランク |
※巡回指導の38項目の最重点項目及び重点項目が「否」とされた場合は、1段階下の評価となります。
<巡回指導の結果、問題点があった場合>
改善通知書 | 指摘項目と改善報告書の提出期限が記入 |
改善報告書 | 指摘項目の改善内容を記入し、期限までにトラック協会に提出
改善報告書を提出しない場合、改善報告が届かない事業者として運輸支局に報告がされます。 |
5.まとめ
巡回指導は、適正化事業実施機関が各運輸局長から指定を受けて、貨物自動車輸送秩序の改善に取り組んでいて、法律に基づく各事業所への巡回指導を通じて業務管理、運行管理等の指導等を行い、それによりトラック事業の適正な実施に関して事業者各位が自律的な取り組みがなされるように図られています。
監査とは異なりますので、日頃わからないことも思い切って質問して、アドバイスをいただくのもいいかと思います。
とはいえ、巡回指導までに何をしておけばいいか、用意した書類で大丈夫なのか、不安に思われた場合は、事前の書類の確認、巡回指導の立ち合いも可能ですので遠慮なくお問合せ下さい。