運送業許可を取得して、営業開始するまでには多くの手順がございます。
今回は、そんな運送業許可の申請要件や手続きから営業開始するまでの流れについて解説します。
目次
運送業許可を取得するための要件
運送業の許可を取得するには、「ヒト」 「モノ」 「カネ」 の3つを揃えることが必要です。
必ずクリアしなければならない内容なので、ひとつずつ詳細を説明していきます。
要件①「ヒト」
運送業を経営するには必ず必要なのが運転者ですね。
運転者は最低5名必要です。
そして、運行管理者最低1名、車両の整備をする整備管理者1名を揃えなければいけません。
運転手の要件
- 運送業許可取得時に緑ナンバーにする車両の台数以上の運転者を確保していること
- 運輸開始前の確認報告までに社会保険や雇用保険・労災保険に加入していること
- 日々雇い入れられる者(日雇い)でないこと
- 2ヵ月以内の期間を定めて雇用される者でないこと
- 14日間以内の使用期間中の者でないこと
- 使用する車両の種類に応じた自動車運転免許を持っていること
ただし、申請書提出時点で5人確保できていない場合でも、許可取得後(運輸開始前報告の前までに)5人以上確保できる見込みであれば、許可申請手続きを進めることは可能です。
運行管理者の要件
- 「運行管理者基礎講習」を受講するか、「運行管理に関して1年以上の実務経験」を有し「運行管理者試験」に合格すること(試験受験の場合)
- 取得しようとする運行管理者資格者証の種類の事業用自動車の運行の管理に関し5年以上の実務経験 プラス その間に運行の管理に関する講習を5回以上受講していること等(試験受験なしの場合)
- 運行管理者の所要人数は車両29台までは1名確保する必要がある(以降30台ごとに1名増員すること)
整備管理者の要件
- 「一定の資格を持っている」又は「一定期間以上の実務経験+整備管理者選任前研修」を修了していること
- 運転手だが以前勤務していた一般貨物自動車運送事業者で整備管理の実務経験が2年以上ある場合
一定の資格・・・自動車整備士1級~3級
一定期間以上の実務経験・・・整備工場、特定給油所、自動車運送事業者のもとで点検、整備、整備管理などをした経験が2年以上(実務経験は、勤務していた事業者から証明してもらう)
申請者等についての要件
欠格要件に該当しないこと
- 申請者が1年以上の懲役または禁錮の刑に処せられたり、一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可の取り消しを受け、その取り消しの日から5年経過していない場合
欠格要件(貨物自動車運送事業法 第5条第1項)
・1年以上の懲役または禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
・一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から5年を経過しない者(当該許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の通知が到達した日前60日以内にその法人の役員であった者で当該取消しの日から5年を経過しないものを含む。)
・許可を受けようとする者と密接な関係を有する者が、一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から五年を経過しない者であるとき。
・一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しの処分に係る聴聞の通知が到達した日から当該処分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に、当該届出の日から五年を経過しないものであるとき。
・許可を受けようとする者が、検査が行われた日から聴聞決定予定日までの間に事業の廃止の届出をした者で、当該届出の日から五年を経過しないものであるとき。
・営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者である場合において、その法定代理人が上記のいずれかに該当するものであるとき。
・法人であって、その役員のうちに上記のいずれかに該当する者のあるもの
申請受付後に実施される法令試験に合格すること
- 法令試験は許可申請後、1回の申請で2回まで受験可能。2回以内に試験に合格できなければ、その申請はいったん取り下げとなり、再申請後再度受験。申請前の受験はできません。
- 法令試験は、試験時間50分で30問の問題が出され、24問(8割)以上の正解で合格
- 法令試験を受験するのは申請者。法人の場合は運送事業担当の常勤役員(代表取締役、取締役など)のうちの1人
要件②「モノ」
事務所(営業所)・休憩室
営業所(事務所)の要件
- 「適切な使用権原がある」こと、
つまり、賃貸または自己所有などで確保できていることが要件
- 事務所を設置しても可と法律で定められている場所にあること※
- 広さの要件は特になし
備品関係(パソコン、コピー機、事務机、キャビネット)やアルコール検知器などを置くことができる広さは必要
事務所を設置しても可と法律で定められている場所は、下記以外です。
- 市街化調整区域
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域(一定の条件を満たす必要有)
- 第一種住居地域(一定の条件を満たす必要有)
- 農地(地目が農地の場合、農地転用の手続きが必要)
休憩室の要件
- 都市計画法や農地法などの法令に抵触していないことが要件
睡眠施設(仮眠室)の要件 (※必要な場合のみ)
- 運行上、ドライバーが睡眠や仮眠を取らないと輸送の安全を確保できない場合
(運転者が帰宅すると8時間以上の休息時間が確保できないような運行があるとき)
- 睡眠施設は1人当たり2,5㎡以上の広さがあること
- 事務所・休憩室と同様に適切な使用権原があること
- 都市計画法や農地法などの法令に抵触しないこと
駐車場(車庫)の要件
- 車庫は原則として営業所に併設しているか、近距離内に設置されていること
<併設できない場合(関西)>
営業所が大阪市内、京都市内、神戸市内、奈良市内、大津市内、和歌山市内等にあるときは営業所から10キロ以内 |
その他の地域(貝塚市内、宮津市内、洲本市内、大和高田市内、八日市市内、田辺市内等)は5キロ以内 |
- 営業所と同じく賃貸また自己所有などの土地を確保すること
- トラックが通行しても交通安全上問題ない場所であること
- 駐車場の出入口が交差点の曲がり角にないこと
- 信号の近くにないこと
- 幼稚園や保育園の近くにないこと
- 車両制限令に違反していないこと
- 出入口前面道路が車両制限令または道路幅員証明書が取れること
- 申請車両が通るのに交通安全上支障がないこと
- 駐車場(車庫)出入口前の道路幅
- 市街地道路で相互通行の場合は基本的に約5m~6.0m以上
(一方通行の場合は2.5m~3.0m以上)
- 車両制限令または道路幅員証明が必要
- 車両と車両及び車両と車庫の間にそれぞれ50cm以上の隙間を確保できること
- 駐車した状態で車両の点検できることが必要
- 1両あたり面積
普通貨物自動車 | 38㎡ |
小型貨物自動車 | 11㎡ |
けん引車(トラクタ・ヘッド) | 27㎡ |
被けん引車(トレーラー・シャーシ) | 36㎡ |
- 農地の場合、農地転用の手続きが必要
- 市街化調整区域でも車庫は設置することは可能(これは営業所と異なる点)
ただし地目が宅地・雑種地・林(保安林を除く)の場合
車両の要件
- 軽自動車以外
- 車検証に「貨物」と記載されているトラック(車検証の用途欄参照)を最低でも5台以上確保すること
「乗用」を5台のうちに含むことは不可
- 購入予定の場合、売買契約書などを提出できれば許可申請可
- トレーラ、トラクタを使用する場合は、セットで1両とカウント
- 営業所の設置地域によっては、NOxPM適合している車両であること
要件③「カネ」
- トラック運送業を開始するための自己資金(=事業開始に必要な資金)を確保している証明ができること
- 損害賠償能力があること
自己資金とは
- おおよそ1,500万円~4,000万円ほど。元々車両を保有している、土地建物が自社所有等条件で大きく変わってきます。
- 銀行など金融機関の発行する「残高証明書」で証明
- 残高証明書は運送業許可申請時と、その約2か月後(申請運輸局より指示ある)の2回提出。その間必要資金を下回らないこと。
自己資金内訳
人件費 | 役員報酬 役員報酬の6か月分×人数 |
運転者 給料の6か月分×最低5人 | |
運行管理者 給料の6か月分×最低1人 | |
整備管理者 給料の6か月分×最低1人 | |
修繕・燃料費 | 6か月分×最低5台 |
車両費 | 一括購入は、全額 |
ローン、リースは、1年分×最低5台 | |
建物・土地費 | 一括購入は、取得価格全額 |
分割購入は、頭金+1年分の割賦金 | |
賃貸は、敷金等の初期費用+1年分の賃借料 | |
保険料 | 自賠責保険料、任意保険料の1年 |
各種税 | 租税公課の1年分 |
※自己資金の中には、銀行などからの借入金を含むことができます。
- 損害賠償能力があることとは
- 自動車任意保険に加入して対人補償無制限・対物補償200万円以上の補償に加入できること
- 保険に加入することが「能力」となっているのは、上記損害保険の1年分の保険料を有していることを、事業資金計画で証明するため
- 運送業許可取得後は、事業用自動車の保険料率で対人無制限・対物200万円以上の補償を付けた自動車任意保険に加入する必要がある
「ヒト」「モノ」「カネ」の要件をすべてクリアすれば申請ができる
申請書類を作成し、運輸支局へ申請することができます。
申請後、運送業を開始するまでに、4カ月から半年以上がおよその目安となっており、ここまでかなりの前準備が必要です。
申請者ご自身でお手続きをすることは可能ですが、行政書士(運送業専門)に依頼いただくことでお仕事に集中することができると思います。
運送業許可取得までの流れ
次に、運送業許可を取得するまでの流れについて解説します。
①運送業許可取得要件の確認
まずは運送業許可が取得できるかどうか、要件を確認しましょう。
②運送業許可申請書の作成
運輸支局に提出する申請書を作成します。
③運輸支局へ申請書類を提出
営業所の所在地を管轄する運輸支局に申請書を提出します。
運送業許可に必要な書類については、次章で解説しております。
④運支局による審査と法令試験
運輸支局で申請書類が受理された後、法令試験を受験します。
(※近畿は奇数月の中旬に実施されます)
この法令試験に合格しなかった場合は再試験を受験しなければなりません。
申請書類に不備がなく、法令試験に合格すると審査終了となります。
⑤運送業許可書の発行
審査終了後、運送業許可書が発行されます。
運送業許可取得に必要な書類は何?
続いて、運送業許可取得に必要な書類については、下記の表の通りです。
一般貨物自動車運送事業の経営許可申請書 |
事業用自動車の運行管理等の体制 |
事業計画を遂行するに足りる有資格者の運転者を確保する計画 |
事業開始に要する資金及び調達方法 |
残高証明書等 |
事業の用に供する施設の概要及び付近の状況を記載した書類(付近の案内図・見取図・平面図・写真、都市計画法等の関係法令に抵触しない旨の宣誓書、施設の使用権原証明書、車庫前面道路の道路幅員証明書、事業用自動車の使用権原証明書) |
法第5条(欠格事項)各号のいずれにも該当しない旨を証する書類 |
法令遵守の宣誓書 |
定款及び登記事項証明書(法人の場合) |
直近の事業年度の貸借対照表(法人の場合) |
役員または社員の名簿及び履歴書(法人の場合) |
資産目録(個人事業の場合) |
戸籍抄本(個人事業の場合) |
履歴書(個人事業の場合) |
必要となる書類は、各支局によって違いますので申請先の必要書類を確認してください。
運送業許可取得後の流れ
最後に運送業許可を取得した後の流れについても解説します。
①車両登録や登録免許税の納付等の許可後に必要な手続きを行う
- 登録免許税の納付
- 車両登録
- 運行管理者選任届
- 整備管理者選任届
- 運輸開始前確認届
などの諸手続きを行う
②営業開始
運送事業の開始
③運輸開始届
運輸開始届と①で出していない場合は、運賃設置届も提出します。
まとめ
運送業の許可を取得するまでの、ひと・もの・かねの各要件と流れについてお伝えしてきましたが、細かい要件、法令の遵守などがまだほかにもあります。
ご自身で許可取得をされる場合、日常の業務の他にこれだけのやるべきこと(調査、申請書作成、申請、修正対応)をしなければいけません。
これらをクリアするには、ご自身でとりかかると大変な労力と膨大な時間が必要になると思われます。
運送業許可取得の実績がある専門の行政書士にすべてお任せいただければ最短の期間で、物件調査から許可取得までお手伝いをさせていただきますのでお気軽に相談ください。