運送業許可の取得にいくら必要?必要な資金の要件を専門家が詳しく説明

運送業許可を取得するためにどのくらい費用がかかるのかを気にしている方は多いのではないでしょうか。

今回は運送業許可を取得するために、具体的にどれくらいの費用が必要なのかを詳しく説明していきます。

運送業許可を取得するためには資金の要件をクリアする必要がある

運送業許可の取得にはいくつかの項目ごとに要件が設けられており、資金もその要件のひとつです。

資金の要件は、運送業許可を取得するうえでも特に苦労する項目であると言えるでしょう。

運送業許可の申請の際に資金計画を提出します。その資金計画と同額もしくはそれ以上の自己資金を有していることが要件です。

運送業許可申請に必要な資金一覧

運送業許可を取得するためには、自己資金を下記の表に記載ある資金計画の項目の合計金額以上所有している必要があります。

項目 明細
人件費(※1) 役員報酬 6ヵ月分
給与 運転手 6ヵ月分

 

運行管理者
整備管理者
事務員
その他
手当 運転手 6ヵ月分
運行管理者
整備管理者
事務員
その他
賞与 賞与額の半年分
法定福利費 健康保険料 (役員報酬+給与+手当)×事業主負担率/1000+賞与×事業主負担率/1000
厚生年金保険料
雇用保険料 (給与+手当+賞与)×事業主負担率/1000
労災保険料
厚生福利費 給与・手当・賞与の2%
燃料費・油脂費・修繕費(※2)

 

燃料費 月間総走行距離(㎞)÷1リットル当たり走行距離(km)×1リットル当たり単価額×6ヶ月分
油脂費 燃料費の3%
修繕費 外注修繕費 6ヵ月分
自家修繕費・部品費
タイヤ費・チューブ費
車両費(※3) 購入費 一括 購入費全額
分割 頭金と1年分の割賦金額
リース料 1年分のリース料金
施設購入・使用料(※3) 建物費 建物の購入費 一括 購入費全額
分割 頭金と1年分の割賦金額
建物の賃借料 賃借料1年分
土地費 土地の購入費 一括 購入費全額
分割 頭金と1年分の割賦金額
土地の賃借料 賃借料1年分
器具・工具什器・備品(※4) 購入料金全額、割賦未払金を含む
施設賦課税(※5) 自動車税 1年分
自動車重量税
環境性能割 取得価格×税率(非課税、0.5%、1%、2%)
保険料(※6) 自賠責保険 1年分
任意保険
税金(※7) 登録免許税 120,000円
その他(※8) 旅費 2ヵ月分
会議費
水道費
光熱費
通信費
運搬費
図書費
印刷費
広告宣伝費

 

(※1)人件費は役員報酬を含む給与や手当の6ヵ月分です。

賞与の項目には会社ごとに定められている賞与額の半年分です。半年に月額給与の何ヵ月分を何回支給するかを記入して提出します。

(※2)燃料やオイル、グリス類を含む燃料油脂費や車検費用、一般修理費、パンク修理費などの修繕費をそれぞれ6ヵ月分です。

燃料費・油脂費・修繕費の欄は、主にトラックを運行する際に必要な運行三費と呼ばれるものです。

(※3)車両費や事務所・駐車場の費用に関しては、一括購入の場合は購入価格の全額、分割の場合は頭金と1年分の割賦金額です。また、車両がリースの場合はリース料1年分、事務所・駐車場が賃貸の場合は賃借料1年分です。

(※4)器具・工具什器・備品には、運送業を始めるために購入した机や椅子などの設備・備品を記入します。

(※5)施設賦課税は自動車税及び自動車重量の1年分です。環境性能割は、環境への負荷に応じて税率が決まります。

自動車税の額は、各都道府県税事務所の早見表で、自動車重量税は国土交通省のホームページで車両総重量から早見表で確認します。

環境性能割は、下記表により自分で計算することも可能ですが、各都道府県税事務所に照会すれば教えてくれるので正確な金額を確認してください。

(※6)自賠責や任意保険などの保険料は1年分です。

(※7)登録免許税の120,000円は運送業許可を取得するときに納める税金のことです。

(※8)スマホの通信費や水道光熱費など、その他すべての諸経費は2ヵ月分です。

【参考】環境性能割の税率

環境性能割とは、新車・中古車問わず自動車を購入した購入者に対して課税される税金のことです。令和1年10月に廃止された自動車取得税の代わりに導入された税金です。

環境への負荷の低減の程度に応じた税率が適用され、自家用車と営業用車間でも税率が異なります。

営業車の税率の方が自家用車の税率よりも低いのが特徴です。

【営業用トラックの環境性能割の税率】

車両総重量 区分 排出ガス要件 燃費要件 税率
2.5t以下 ガソリン車 平成30年排出ガス基準50%低減達成車又は平成17年排出 ガス基準75%低減達 成車 平成27年度燃費基準+25%達成(平成22年度燃費基準+57%達成)(※1) 非課税
平成27年度燃費基準+20%達成(平成22年度燃費基準+50%達成)(※1) 0.5%
平成27年度燃費基準+15%達成(平成22年度燃費基準+44%達成)(※1) 1%
上記以外 2%
2.5t超3.5以下 ガソリン車 平成30年排出ガス基準50%低減達成車又は平成17年排出 ガス基準75%低減達 成車 平成27年度燃費基準+15%達成 非課税
平成27年度燃費基準+10%達成 0.5%
平成27年度燃費基準+5%達成 1%
平成30年排出ガス基準25%低減達成車又は平成17年排出ガス基準50%低減達 成車 平成27年度燃費基準+20%達成 非課税
平成27年度燃費基準+15%達成 0.5%
平成27年度燃費基準+10%達成 1%
ディーゼル車 平成30年排出ガス基準適合又は平成21 年排出ガス基準Nox・PM10%低減 平成27年度燃費基準+15%達成 非課税
平成27年度燃費基準+10%達成 0.5%
平成27年度燃費基準+5%達成 1%
平成21年排出ガス基準適合 平成27年度燃費基準+20%達成 非課税
平成27年度燃費基準+15%達成 0.5%
平成27年度燃費基準+10%達成 1%
上記以外 2%
3.5t超 ディーゼル車 平成28年排出ガス基準(※2)適合又は平成21年排出ガス基準(※3)Nox・PM10%低減 平成27年度燃費基準+10%達成 非課税
平成27年度燃費基準+5%達成 0.5%
平成27年度燃費基準+達成 1%
上記以外 2%

(※1)JC08モード燃費値とWLTCモード燃費値を算定していない場合のみ適用

(※2)トラックの車両総重量が3.5t超7.5t以下の場合は平成30年排出ガス基準

(※3)トラックの車両総重量が 3.5t超12t以下の場合は平成22年排出ガス基準

運送業許可取得時の自己資金の証明方法

運送業許可を取得するときの自己資金の証明は、金融機関が発行する残高証明書によって行います。

保険積立金の残高証明書は自己資金の証明には含まれません。

残高証明書とは、指定した過去の年月日の口座の残高を証明する書類のことです。

運送業許可取得の際の残高証明書はいつ必要か?

上記の項目の所要資金の合計金額以上の自己資金が必要です。さらに、申請してから許可するまでの期間、いつ残高証明書を求められてもいいように確保しておきましょう。

申請後の実施される法令試験に合格した場合、運輸局から預金残高証明書を提出するように連絡がきます。預金残高を証明する日は運送業許可の申請日と運輸局が指定した日付です。

この2つの日付の預金残高が所要資金を下回っている場合、申請を取り下げることになります。

残高証明書の3つの注意点

残高証明書を提出する際の注意すべきことは残高証明の証明日と、残高証明の反映日、1回目の預貯金の重要性の3つです。

①残高証明書の証明日は原則申請日

地域によって若干違いはありますが、残高証明書の証明日は原則運送業許可を申請する日です。残高証明書は申請後日、原本での提出を求められます。

②入金日当日の預金残高は残高証明書に反映されない場合がある

金融機関によって所要日数は異なりますが、入金日当日の預金残高は残高証明書に反映されない場合があります。

余裕をもって口座に入金しておくことも大事です。

③1回目の残高証明書を提出する時点で開業の所要資金以上の自己資金が必要

残高証明書は申請日と法令試験後の指定日の2回提出します。

1回目の時点で事業開始に必要な資金の全額以上の自己資金を証明しないといけません。

この自己資金は申請日から運送業の許可が下される認可日までの期間、常時確保されている必要があります。2回目の提出は1回目の自己資金の確保ができているかを確認するためのものです。そのため、仮に2回目の提出の際に預貯金が増えていたとしても自己資金と認められる金額は1回目の金額のみです。

運送業許可を取得するために必要な目安金額

運送業許可を取得するために必要な目安金額は1,500万円~3,000万円ほどです。

営業所や車庫、車両などを既に所有している場合であっても1,500万円程度はかかることが多いです。追加で必要な項目があれば加算します。

また、上記の金額以外にも行政書士に依頼した場合の費用も考慮しておきましょう。

まとめ

今回は運送業許可の取得に必要な費用について説明しました。

運送業許可の申請の際に資金計画を提出します。その資金計画と同額もしくはそれ以上の自己資金を有していることを証明しなければなりません。

この自己資金は残高証明書を提出することで証明します。申請日の時点での残高証明書を発行する必要があるために事前に預貯金が資金計画の合計金額以上あるかを確認しておきましょう。

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