個人事業主でも運送業許可を取得できる?要件や法人との違いを解説!

「個人事業主として運送業を始めたいと検討しているが、法人だけでなく個人事業主の場合でも運送業許可を取得できるのか?」そのような疑問を持っている方のために、今回の個人事業主が運送業許可を申請するために必要な要件と注意点を解説します。

また、個人事業主として運送業許可を取得するか、法人として運送業許可を申請するか悩まれている方にも、運送業許可を取得する上での法人と個人事業主との違いや、法人成りした場合の手続きに関しても説明していきます。

個人事業主でも運送業許可は可能

運送業とは、依頼主から送料などの手数料を受け取り、目的地まで荷物を届ける仕事のことです。

上記のように荷主などから依頼を受けて運賃をもらい貨物を運ぶ場合、運送業許可の取得が必要であると貨物自動車運送事業法によって定められています。

この法律は法人だけでなく、個人事業主の場合にも適用されるため、個人事業主として運送業を始めるには運送業許可を取得することが必要です。

運送業許可を取得するための5つの要件

個人事業主が運送業許可を取得するためには以下の5つの要件を満たす必要があります。

要件についてより詳しく知りたい方は下記の記事も併せてご覧ください。

運送業許可の申請から許可後の手続きの流れ、必要書類を解説

①人

運送業許可を取得するためには、まず人を確保する必要があります。これは法人と同じです。

1人では運送業を開業することができません。事業主を含めて最低でも6人の人数を確保する必要があります。運送業の事業開始を実現するためには、運行管理者1人とドライバー5人の人材が必要です。

他にも運転者や運行管理者が兼任可能ですが、整備管理者1名の人材確保も必要です。また、点呼業務に備えて運行管理補助者も確保しておくことをおすすめします。

運送業許可の申請時に雇用関係でなくても許可取得後に従業員になってくれることが確定または確保予定であれば問題ありません。

②資金

次に、運送業を開業するために資金の要件があります。これも法人同様です。

資金要件についての解説はこちら

事業開始資金とは運送業を開始してから一定期間売上を得られなくても事業を続けていくことができるお金のことです。

具体的には人件費や燃料費、保険料などが挙げられます。

半年から1年間、仮に売上がなかったとしても運送業を持続させられる資金を持っていることによって、運送業開始前後に必要な費用を持っているという判断基準です。

③場所

運送業許可を申請するためには、運送業で利用する予定の事務所・休憩室・車庫の確保をする必要があります。これも法人と同じです。

これらの事務所・休憩室・車庫は賃貸か自己所有かは問われません。

賃貸の場合、運送業許可の申請時に賃貸借契約書または使用承諾書を添付資料として提出します。

自己所有の場合、土地と建物の登記簿謄本を添付します。

賃貸の場合、賃貸借契約書の契約期間が2年以上である必要があるので、契約書の契約期間または自動更新条項があるか確認してください。

事務所・休憩室・車庫を選ぶ際都市計画法上の要件等ありますので、要確認です。

事務所や休憩室に関しては、市街化を抑制すべきと設定されている市街化調整区域には設定できません。

車庫に関しては交通安全上で支障がないことを確認される場合があります。

④車両

運送業で使用する車両を最低でも5台準備する必要があります。これも法人と同じです。

⑤試験に合格する

法令試験の合格も運送業許可取得の条件のひとつです。こちらも法人と同じです。

法令試験についての解説はこちら

運送業許可を申請後、最初の奇数月の中旬に50分間の法令試験を受験します。

【法令試験の受験者数と合格者数】(近畿運輸局管内)

受験者数 合格者数 合格率
2020年7月 58人 46人 79.3%
2020年9月 49人 30人 61.2%
2020年11月 62人 46人 74.2%
2021年1月 52人 36人 69.2%
2021年3月 49人 39人 79.6%
2021年5月 56人 42人 75.0%
2021年7月 63人 51人 81.0%
2021年9月 58人 51人 87.9%

2020年の7月から2021年9月の合格率の平均は75.9%です。合格するためには、30問中24問以上正解しなければなりません。

問題形式は正しい文章には〇を、誤っている文章には×を記入する正誤問題です。

以下のページで過去問も掲載されているので充分に対策をして臨むことが重要です。

(参考)近畿運輸局|国土交通省

運送業許可を取得する上での法人と個人事業主の違い

個人事業主として運送業許可の申請をする場合と、法人として運送業許可申請をする場合の申請方法はほとんど同じです。異なる点は、以下2点です。

試験の受験者

個人事業主が運送業許可を申請する場合は、個人事業主本人が法令試験を受験しなければいけません。

一方、法人の場合は常勤役員のうちだれか1人の受験となります。

申請書類

法令試験合格後に書類審査が始まります。その書類審査の標準処理期間は3~5ヵ月です。

様々な書類を準備する必要がありますが、法人の場合の履歴書は役員全員分を用意する必要があるのに対し個人の場合は個人事業主の分のみです。

申請時、法人の場合は貸借対照表の添付でその時点では残高証明書の添付は要求されませんが、個人申請の場合は、申請日前1週間以内の残高証明書添付により必要資金があるかを確認されます。

その残高証明書は申請者名義のものになります。近畿運輸局内許可申請では、家族名義の口座の残高証明では認められません。

個人事業主が運送業許可の取得をする際の注意点

個人事業主が運送業許可を取得する際の注意点としては下記の2点が挙げられます。

取引先次第ではありますが、一般的に法人のほうが対外的な信用が高く、個人事業主であれば仕事を受注するのが難しい場合もあると思います。法人と比較すると、より取引先の確保が重要となるでしょう。

また、法人成りを考えた場合、法人設立後、譲渡譲受認可申請の手続きが発生します。

その後、改めて法令試験に合格しなければなりません。認可が下りた後は、車検証、任意保険等法人名義に変更する必要もあります。

社会保険加入証明などの書類を添付して譲渡譲受完了届を提出し、法人として事業開始となります。

数年後法人化を予定されている場合はご相談ください。

まとめ

今回は個人事業主が運送業許可を取得する方法について説明しました。

個人事業主であっても要件を満たせば運送業許可取得は可能です。

法人同様、運送業許可を取得するためには以下の5つの項目(人・資金・場所・車両・試験に合格する)の要件を満たす必要があります。

ご自身での運送業許可申請に不安がある方や将来的に法人成りを検討している場合は、運送業許可専門の行政書士に依頼することをおすすめします。

運送業許可申請なら
お任せください!

「運送業許可申請を自分でできるか不安」
「役員の法令試験対策で何をすればよいかわからない」
「監査対策で、何を準備すればよいかわからない」
「巡回指導対策で、何を準備すればよいかわからない」
「事業報告書や事業実績報告書を相談をしたい」
といったお悩みのある方は、まずは一度ご相談ください。

運送業許可申請から申請後のサポートまで対応可能です。
法令試験対策セミナーも実施しております。
運送業許可に強い当事務所にお気軽にご相談ください。